生後2ヶ月からのワクチン
多くのワクチンは公費で受けることができるため、自己負担はほとんどありません。
ワクチンには、感染症への免疫を獲得して罹患や重症化を防ぐ効果がありますが、ワクチンの種類や接種の回数、接種する時期など情報が複雑で、適切な情報が分からず困っている方も多いでしょう。
当院では、ワクチンのスケジュールを分かりやすく説明し、お子さんとご家族の方に安心して適切に初めてのワクチンを接種して頂けるよう心がけています。
ワクチン接種の直後は、保冷剤で冷やしたり、注射しない方の手でハンドグリッパーを握ってもらったりすることで、注射した部分の痛みを和らげる対策をしています。
また、できる限り痛みが和らぐように、ご家族の方に抱っこされたままでの接種をお願いしています。
乳児は、生まれた時には母親から色々な免疫をもらっていますが、時間とともに免疫は減っていき、様々な感染症にかかりやすくなります。
感染症には、命に関わるほど深刻な病気もあります。しっかりワクチン接種を受け、予防することが重要です。
お子さんが生後2ヶ月を過ぎたら、ワクチンの接種を始めていきましょう。
当院のワクチン接種の時間は、発熱や感染症の他の患者様と接触しないように一般診療とは異なる時間帯に設定しており、院内の感染対策を徹底しています。
予防接種とは
ワクチンを接種することを予防接種といいます。
ワクチンは感染症の原因になる特定の病原体を無毒化や弱体化するために作られました。ワクチンが体の中に入ると、対応する病原体への免疫が生まれ、特定の感染症の罹患や重症化を予防することができます。 また、ワクチンを接種した人の感染を防ぐだけではなく、周りに感染させることも防ぎ、感染症が広がらないようにしたりする効果もあるため、公衆衛生としても大変重要です。
2020年(令和2年)の10月からは、ロタウイルスワクチンの定期接種が開始しており、接種の間隔の規定も、変更になっています。予防接種のスケジュールの作り方なども、ご不明な点がありましたら、どんなことでもご相談ください。
定期接種と任意接種について
予防接種には定期接種と任意接種の2つの種類に分けられています。
定期接種
感染力の高い感染症を対象に実施されます。「予防接種法」に従って各自治体によって実施され、国が定めた期間内での接種であれば、公費負担で自己負担がありません。
また、集団感染を削減する効果もあると考えられています。
なお、定められた期間以外での接種の場合は「任意接種扱い」になり、全額自己負担になるため注意しましょう。
任意接種
死亡に至るほどの重症化が少ない感染症を対象に実施され、費用は全額自己負担になります。
ただし、任意接種の対象となる感染症でも、重症化する可能性はあるため、接種を受けることを推奨しています。
不活化ワクチンと生ワクチン
不活化ワクチンとは、病原体の毒性や増殖性を失わせて、免疫の獲得に必要な成分だけを含ませたワクチンです。
1回の摂取では免疫を十分に獲得できないため、数回にわたり接種する必要があり、ワクチンの種類によって接種回数は異なります。
不活化ワクチンには季節性インフルエンザワクチン、B型肝炎ワクチン、小児用肺炎球菌ワクチン、日本脳炎ワクチン、4種混合ワクチン、ヒブワクチンなどがあります。
また、生ワクチンは、弱毒化した生きたままの病原体を接種して感染させることで免疫を獲得するワクチンです。
不活化ワクチンと比べて、少ない回数で免疫を得ることができます。
生ワクチンには注射生ワクチンと経口生ワクチンの2つの種類があります。注射生ワクチンにはBCGワクチン、水痘ワクチン、麻しん・風しん混合ワクチン、おたふく風邪ワクチンなどがあり、経口生ワクチンにはロタウイルスワクチンなどがあります。
予防接種の際の持ち物
- 健康保険証
- 母子健康手帳
- 予防接種予診票兼接種票(定期接種のみ)
予防接種の種類
ヒブ(インフルエンザ菌b型)
ヒブ(インフルエンザ菌b型)は、肺炎や中耳炎を引き起こす細菌の一種です。
抗生物質の効かない耐性菌も多くなってきており、治療が難しくなっています。
毎年約600人が細菌性髄膜炎になり、後遺症が残ったり、死亡したりすることがあります。
特に、0歳児は細菌性髄膜炎になる危険性が高いと言われています。
生後2ヶ月からは、B型肝炎ワクチンやロタウイルスワクチン、小児用肺炎球菌ワクチンなどと一緒に接種することを推奨しています。
肺炎球菌
肺炎球菌感染症は、中耳炎や副鼻腔炎、肺炎などのほか、細菌性髄膜炎や敗血症など、命を落とす危険性のある病気を引き起こすことがあります。
WHOによって小児における最も重要なワクチンと位置付けられています。
生後2ヶ月からは、B型肝炎ワクチン、ロタウイルスワクチン、ヒブワクチンと一緒に接種することを推奨しています。
4種混合
百日咳、破傷風、ポリオ、ジフテリアの4種の感染症を対象としたワクチンです。
この4種は、発症すると後遺症があり、また死に至ることもある非常に危険な感染症です。
特に、百日咳は乳幼児で罹患しやすく、重症化することもあります。
生後3ヶ月から接種が可能なため、早めに4種混合接種ワクチンを接種することをお勧めしています。
BCG
結核を対象としたワクチンです。現在でも年に約20,000人の方に結核が発症しており、その内約2,000人が命を落としています。
乳幼児は結核性髄膜炎、結核症、粟粒結核などで重症になることが多いため、生後11ヶ月までに必ずBCGワクチンを接種しましょう。
麻しん風しん
麻しんは感染力がとても高く、「はしか」の名前でよく知られる病気です。
また、風しんは成人してから罹患すると重症化する可能性が高いと言われています。
妊娠中に罹った場合、胎児に先天性風しん症候群という障害を引き起こすことがあります。
この障害は乳児の心臓や目や耳などに影響し、妊娠初期に感染すると100%発症すると言われています。
1歳になったら、早めに1期のワクチンを接種することを強くお勧めします。
子宮頚がん
子宮頚がんは毎年10,000~15,000人がかかっており、その内約3,000人が死亡している重篤な疾患です。
このワクチンの接種が推進されている国では、HPV感染や前がん病変の発症が有意に減っているという報告があります。
当院では、効果が高いと考えて子宮頚がんのワクチン接種を推奨していますが、接種について強制はしていません。
接種を迷っている方でも、利点や副反応などの危険性について丁寧に説明し、接種をご判断頂いています。
ご不安なことや不明なことがありましたら、お気軽にご相談ください。
水疱(水ぼうそう)
水痘帯状疱疹ウイルスに感染することで引き起こされ、重症になると「とびひ」という皮膚の症状や、肺炎や脳炎などにも発展します。
1歳を迎えたら、すぐにワクチンを接種することを強くお勧めしています。
なお、1回のみの接種では20〜50%が数年のうちに水痘にかかると言われています。
そのため、必ず2回目の接種も受けましょう。
B型肝炎
B型肝炎ウイルスの感染者数は、日本では約100万人と言われており、多くの人に感染の危険性があります。
そのほとんどは乳幼児期に感染すると推測されており、慢性肝炎になると肝硬変や肝臓がんなどの死亡の危険性もある疾患に発展することもあります。
生後2ヶ月からワクチンを接種できるため、同時期から接種が可能なヒブワクチンや肺炎球菌ワクチンと合わせて接種すること推奨しています。
おたふくかぜ
(流行性耳下腺炎/ムンプス)
耳下腺が腫れる症状があり、その様子から「おたふくかぜ」と呼ばれています。
無菌性髄膜炎や難聴、脳炎、精巣炎などの重い合併症が起こることがあります。
おたふくかぜによって難聴になった場合、治療が行えないため、1歳を迎えたら早めに1回目のワクチン接種を受けましょう。
子どもの予防接種
種類・回数・推奨年齢
定期接種
ロタウイルスワクチン (1価・5価) |
・1価ワクチンでは2回、5価では3回の接種が必要です。 ・1価ワクチンは生後24週目まで、5価は生後32週目までに終了します ・生後6週後から接種が可能になります。 ・2回目の接種は、1回目の接種から4週間以上空ける必要があります。 ・3回目の接種は、2回目の接種から4週間以上空ける必要があります。 |
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ヒブワクチン | ・合計で4回の接種をお勧めしています。 ・生後2ヶ月から4ヶ月の間に3回の接種を行います。 ・生後12ヶ月から17ヶ月までの間に4回目の接種を行います。 |
小児用肺炎球菌ワクチン | ・合計で4回の接種をお勧めしています。 ・生後2ヶ月から4ヶ月の間に3回の接種を行います。 ・生後12ヶ月から15ヶ月までの間に4回目の接種を行います。 |
B型肝炎ワクチン | ・合計で3回の接種をお勧めしています。 ・生後2ヶ月から4ヶ月の間に2回の接種を行います。 ・生後7ヶ月から8ヶ月までの間に3回目の接種を行います。 |
4種混合ワクチン (DPT-IPV:ジフテリア・ 百日咳・破傷風・ポリオ) |
・合計で4回の接種をお勧めしています。 ・生後3ヶ月から2歳を迎える前に接種を行います。 |
3種混合ワクチン(DPT) | ・破傷風、百日咳、ジフテリアを対象にしたワクチンです。 |
ポリオ | ・合計で4回の接種をお勧めしています。 ・生後3ヶ月から2歳を迎える前に接種を行います。 |
2種混合ワクチン (DT:ジフテリア・破傷風) |
・11歳から13歳を迎える前に1回の接種を行います。 |
麻しん(はしか) | ・風しん混合ワクチン(MR) ・1歳から2歳を迎える前に1回の接種を行います。 ・5歳から満7歳までの間に1回の接種をお勧めしています。 |
水痘(水ぼうそう)ワクチン | ・合計で2回の接種をお勧めしています。 ・生後12ヶ月から15ヶ月の間に1回目、その後6ヶ月から12ヶ月開けて2回目を接種します。 |
日本脳炎ワクチン | ・合計で4回の接種をお勧めしています ・3歳の内に2回目までの接種を行います。 ・4歳の内に3回目の接種を行います。 ・9歳から12歳の間に4回目の接種を行います。 |
BCGワクチン | ・生後5ヶ月から8ヶ月までの間に、1回の接種をお勧めしています。 子宮頸がんワクチン(HPV) ・女児で、中学1年生が対象です。 ・合計で3回の接種をお勧めしています。 |
※2013年6月から、接種の積極的な推奨は中止されていましたが、2021年10月より「積極的勧奨」が再開されています。
※推奨年齢期間を過ぎてからの接種は、任意接種の扱いとなりますのでご注意ください。
任意接種
A型肝炎ワクチン | ・合計で3回の接種を行います。 ・1歳から接種が可能です。 ・2回目の接種は1回目の接種から2週間から4週間の期間を空けて行います。 ・3回目の接種は2回目の接種から半年程空けて行います。 |
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おたふく風邪ワクチン | ・合計で2回の接種を行います ・1歳以降での接種は早期接種になります。 ・5歳から7歳を迎える前に2回目を接種します。 |
インフルエンザワクチン | ・毎年、流行前の10月から1月の間での接種をお勧めしています。 ・生後6ヶ月以降の全年齢が対象です。 ・13歳未満の場合は合計で2回行います。 ・1回目から2回目の間は2週間から4週間程度空ける必要があります。 |
保護者の同伴について
保護者の方が同伴できない場合は、お子さんの健康状態や、予防接種、予診票についてよく知っているご親族の方と一緒にご来院ください。
なお、保護者でない方が同伴する場合は、祖父母や親族など同居するご家族でも、「予防接種委任状」が必要になります。
「予防接種委任状」をお持ち頂けないと、接種が受けられませんので、ご注意ください。